当店名物店員okayanプレゼンツ「ヨタバナシ」。日々のこと、お店のこと、ワタクシのこと、あんなこと、こんなこと、ちょこちょこ書いてます。

4周年を迎えてちょっとしたある日、アマゾンから予約しておいたCDが届きました。佐野元春さんの「『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』 限定編集版」。最近この手の....ボーナストラックや未公開映像を含めたパッケージ商品がよく出たりしますけど、えぇ、これもまさにそんなかんじ....ではありますが、このアルバムは僕にとってとても大切なアルバムでしたし、彼（佐野元春）のアルバム中、やっぱり最も好きな作品であることにかわりがなく......19年前....'89年のアルバムで、僕は19歳.....地元の予備校に通っておりました（苦笑）。

このアルバムのなにがいいのか？

ま、それは人それぞれなんでしょうし.....全然好きじゃないひともいらっしゃるとは思いますが、僕は今回のこの限定版をあらためて聞き直して、それがすごくよく理解出来たような気がしました.....あの頃の僕が、どんなに衝撃を受けたかも、ありありと思い出せました。

それは...僕にとって

ひとつの啓示、ひとつの救いでした。

中学生の頃、僕は同じ学年の男子のグループに.....嫌われておりました（苦笑）。
いじめられてた.....ほど陰湿でも暴力的でもなかったし、でも聞こえよがしに陰口をたたかれたり.....えぇ、はじまったばかりの青春時代....にもかかわらず気持ちが塞ぐ中学生活。それでも他に.....学校以外に自分が所属する社会というのがあれば、それはそれで気も紛れたのかもしれませんが....過疎化の進む農村の小さな中学校....ひと学年が50人ほど、全校生徒が200人に満たないホントに小さな中学校、僕の居場所はそこしかなく、それを考えると.....

それはそれでけっこうツライものでした。

原因は.....まぁ、ハッキリしていました。
それは....元はといえば.....口は災いの元、でしたね（苦笑）。配慮もなく言いたいことを言いたいように言う....自分のこともヒトのこともなんでもかんでも。まだまだこどもだったから誰かのことを思いやる....そんなことを考えさえもしなかった。

だから誰かを不愉快にしたし、
そして.....そのしっぺ返しをくらっただけなのでした。

自業自得。

まさにそのとおり....それはよくわかっていました。

ま、そんなことをわかった上で.....でも現実的にはつらいところに追いやられている。さて僕はどうすればいいのだろうと。

自分のことを嫌いな人。

その人達とどうやってつきあえばいいのか？

ひとまずはちょっと黙ってみることにしました（苦笑）。
考えなしにおしゃべりだった頃よりは.....悪くはなかった（笑）。でもそれではなにかを好転させるほどのことは、もちろんなくて....だからどうやったらいいのか......媚びへつらって....人目ばかりを気にしても.....結局はうまくはいかないし、やっぱりみじめだった....いったいどうすればいいのか？

わかりませんでした。

わからないまま.....なんとか中学校を卒業しました。どんなに楽しく笑っていても、ココロのどこかいつもそのことを考えていた.....ツラかった3年間。一回でも休みはじめたら、もう学校には行けなくなるかもと....えぇ、皆勤でしたよ3年間（苦笑）。でも....それでも仲のいい友達もいたし、両親も兄弟もいて、ちょうどギターにも出会った.....絶望的に孤独なわけではありませんでした。

山口市の大きな高校に入って....そりゃ中学校が小さいからね、えぇ、それに比べたら遙かに大きな高校で....中学時代の反省から、まず僕はなるべく目立たないようにしました....新しい人間関係、まずは嫌われないようにしなくてはと.....なるべく仲良くできるようにソフトにまいりましたが......えぇ、こんだけ人が多いと.....ふつうにしてればあまり自分に関心が払われることもないなと（笑）。
それからはまずまず自分の個性も出せるようになったし、ちょっとはおしゃべりでもいましたけど、それでも.....やっぱり人目が気になりましたし、誰かに嫌われるおそれというのはそうカンタンに拭い去れません。

高校を卒業して、地元の予備校へ。
大学に入るために勉強する....わかりやすい目的があったし、そんなにみんなと仲よくしなくちゃいけないとか、考えずにすんだ....その分やりやすかった予備校時代、そのアルバムと出会いました.....佐野元春「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」。

単身ロンドンに渡って作ったとてもロックでパンクなアルバム....吠えるような剥き出しのギター。ベースもドラムもタイトなリズム、音ははからからに乾いてて、そこに現代詩的な比喩表現の積み重ね.....と思ったら、血や涙が流れるようなわかりやすく生々しい言葉が溢れてきて......身体の中の根源的な力みたいなものが真正面から圧倒的な大きさで僕を打ちました。

イヤな奴らはそのままでいい。
「陽気にいこうぜ」佐野元春

そうか！....と。

自分を嫌いな人と、どうやって関係を良好にしていけるのか.....そんなことを考えながら、僕はとてもみじめで卑屈で.....暗い回転ばかりをしていた.....あぁ、そうか、

そんなことは考えなくてもいいんだな。

僕は彼らを.....どうにか変えたかったんだろう.....どうにか....自分を好きになってもらえないだろうかと。でも....誰かを変えるのは、途方もなく難しい。

だったら、自分が変わればいい。
自分の考え方や生き方を変えればいい。
そういえば彼の歌に、こんな歌詞もあった。

なにもかわらないものはなにもかえられない
「インディビジュアリスト」佐野元春

19歳の僕は....やっとそこで中学時代のその暗い呪縛から解き放たれたような気がしました。そう、自分の好きな人達と、自分の好きなことを思いっきりやればいいんだよ、僕の人生や時間は、そんな風に使われるべきなんだよ！

そうなんだヨ！（笑）

.....ま、だからといって、その後夢のようなバラ色の青春時代が訪れたわけじゃないですけどね（苦笑）。

人に好かれたい。
今でも.....いつもそう思っています、出来るだけ、人に好かれたい。

それは.....こんな、お店なんかやるには、とてもいいアイディアだと思います。誰も彼もに好かれることは出来ないとわかってはいますけど、それでも.....このお店に来てくれる人には.....出来るだけ好かれたい。そう望むこと、そう努力することは決して間違ってはいないし.....あのツラかった中学生の頃の後遺症というよりは、やっぱりあの頃僕がつくづく学んだことなんだろうと。

でもそれでも嫌われる時は、やっぱり

......そのままでいい。

その人達に好かれようとするでもなく、そしてその人達を逆に嫌悪することもなく.....自分の好きな人達.....友達や家族、そしてスタッフにお客さん....そんな人達のことや、これからのこと、なるべく楽しいことをこれからもずっと考えていきたいと思います。

6月迎えた4周年。
実は僕はずっとそんなことを思ってた....
彼の歌を何度も聴きながら、

もっともっと強くならなければ、と。