第23話

伝えたいことを、伝えるまで。

photo1.jpg

今年に入ってから、ほとんどの定休日を山本さんからのインタビューにお答えすることに費やし、3人で力を合わせてやってきました。そのインタビューをもとに、山本さんが書いてくれた草稿に赤を入れて、ブラッシュアップしていく作業が7月頃からはじまりました。

山本さんは私たちのことを一番よく分かってくれているライターさんであります。お客様であり、今は友人でもある...だから大丈夫だろう、という甘えがお互いに、少しずつあったのじゃないかと思います。聞かれたことを答える、というインタビュー形式での取材を、山本さんが一人称で書き直す、という手法もきっと大変だったろうと思います。
でもとりあえず、草稿で一人称で話しているミヤザキは、まだまだミヤザキにはほど遠かった...もちろんokayanも(笑)。もちろん、山本さんだって、一発で決まるように書いたのではなく、まずは全体の流れを分かりやすく、書いてくれたわけです。山本さんが作ってくれた仮縫いの「ミヤザキのぬいぐるみ」に、血を通わせるのが私たちの仕事でした。

インタビュー形式での取材だったこともあり、ざっくばらんに話をしたことで、気楽に楽しく話せたこと、そして3人で話すことでふくらんでいったことも多々ありましたが、逆にインタビュー形式の取材の弊害もありました。たとえば「メニューづくりは大変ですか?」と聞かれ「大変です」と答えたとき、文章になると「メニューづくりは大変です」と私が話すことになってしまう。でも、本当の気持ちは「大変です」より「楽しいです」が強かったり、「やりがいのある仕事です」だったりする。ただ、私たちが友人である山本さんなら「分かってくれるだろう」と深く考えず、その場のフィーリングで安易に口にした言葉が、本文にそのまま反映されてしまったりもするということを、草稿を見て実感しました。このままでは、本当にいいたいことは伝わらない!

インタビューで話した「話し言葉」ならではの言い回しを整えたり、微妙なニュアンスを修正したり、思い出したエピソードを追加したり、逆に冗長な部分は削除したり...。私たちが伝えたいことをより強化し、無駄はそぎ落としていく...無駄に思えるようでも、その物語(とあえて言いますが)の中の風景を見せるために必要な無駄は残していく...。単なる店作りのHOW TO本ではないので、ゴリゴリと実務や思想だけを述べてもおもしろくない。編集の宮後さんからは「二人の生き方本だと思って下さい」と方向性が示されたので、私たちの生きる上で大切にしている部分本筋には関係なくても、おいしい道草は食っていこう!という気持ちで、ガンガン赤を入れました。山本さんは途方に暮れたに違いありません(笑)

でも私たちも、毎日15時間働いた後に「リトスタ本残業」と称して居残りで原稿を読み込んだり、赤を入れたり。もちろん定休日もリトスタ本とは切っても切れない生活をしていました。「いいんだー!どうせ私たちにお休みなんて必要ないんだー!」とよく分からないテンションのあがり方をしつつ、リトスタ本に没頭する日々。それは苦しく、辛くも楽しく充実した日々でした。

すべては、良い本を作るため。
伝えたいことを、伝えるため。
そのためなら、なんだってやってやる。

私とokayanはもちろん、ライターである山本さん、編集の宮後さん、デザインの渡辺さんと堀内さん...ある意味ものすごいチームワークで突き進んでいたと思います。当事者である私たちの伝えたいことを、チームメイトの客観的な目を通してブラッシュアップして、それをさらに私たちが、形を整えていく。本というのは、みんなの力で磨かれていくものなんだな、リトスタ本はしあわせな本だな...そう思いました。(麻)

 
この記事につぶやく。 感想など送る。 イイネッ!