第5話

どうやってリトスタ本を企画したか?

本の企画というのは、最初に思いついたアイデアを、いろんな方向から補強していく作業だと思います。

「リトスタの本を作ったら面白いんじゃないか」というアイデアは、四年前にミヤザキさんやokayanと取材を通じて知り合った頃からぼんやり考えていました。ただ、自費出版ならともかく、全国津々浦々の書店に出回るような本を作るのは、ちょっとした思いつきだけでできることではありません。大勢の人や多額のお金が動くことでもありますし、出版社もそれなりのリスクを背負います。だから、企画をする際は、出版社の編集者さんに「これはいけるんじゃないか‥‥?」と思わせる説得力を持たせることが必要になります。

ここで間違えてはならないのは、「今、世間ではこういう本が売れているから‥‥」というデータに頼りすぎないということ。データを基に理詰めで企画を発想すると、結局ほかの本の模倣になってしまって、オリジナリティのある面白い企画にはなりません。類書をチェックすることは重要ですが、それは「この本みたいな本を作ろう」という模倣の対象としてではなく、「この本を読んでいる読者なら、自分が企画している本も読んでくれるんじゃないか?」という読者層の参考として考えるべきです。

リトスタ本の企画の場合、お店のことをあまりよく知らないライターの方だったら、最近世間でよく出回っているお洒落でスマートなカフェ本のような本を作ろうという発想をするのではないかと思います。でも僕はアマノジャクなので、「お洒落なカフェ本にだけは絶対したくない」と思っていました(笑)。僕が知っているリトスタの人たちは、お客さんが気づかない場所で、むしろ愚直なくらい真摯に料理やサービスに向き合っています。そういう真摯さは、単なるお店経営のノウハウを越えて、人としての一つの生き方を示すものになりうるはずです。本にするなら、そっちの方が断然面白い。

僕はその「真摯さ」を伝えるということを出発点にして、リトスタというお店の魅力やこれまでに彼らが積み重ねてきたものを、お店のことを知らない人にもわかりやすく、かつ面白く読んでもらえるような方法を考えていくことにしました。どういう構成にするか? どんな文体にするか? デザインやビジュアルはどうするか? などなど‥‥。

最初に思いついた「自分が読者だったらこんな本を読みたいなあ」というアイデアを大事にする。そして、そのアイデアを一番いい形で伝えるにはどうすればいいかを考え、補強していく。そうやって本の完成形のイメージをできるだけ具体的に練り上げていくことが、本を企画するという作業なのです。

‥‥まあ、そうは言っても、このご時世、本を一冊出すだけでも大変なんですけどね(苦笑)。

(yama_taka)

 
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