豆まきの夜。

[ 小さな星日記 ]

今日は節分。太巻きを丸かじりすることなんか全然知らなかった子供の頃、豆まきはとても楽しい行事でした。

夜になったら、玄関や裏口、その他の扉から、僕たち3人の兄弟が、元気よく豆をまくんです。
鬼は外!
豆は暗闇の中に静かに吸い込まれます。だいたい雪が積もってたので、ほとんど音がしなかったように思います。
福は内!
ぱらぱらっと畳や廊下に小さな豆が転がります。

そのあと、座敷(床の間)へ移動して、みんなで車座に座ったら、電気を暗くして、それっと父がまいてくれる豆を、わぁ〜っと3人兄弟が必死に集めます。それがそれから約1週間のおやつになるわけだから、出来るだけたくさん確保しなくてはなりません。とにかくみんな必死(笑)。
外にまく豆は大豆をただ煎ったものでしたが、座敷の間でまかれる豆は、おつまみの豆だったり、キャンディーだったり、キャラメルだったり、小さなおかきだったり、サラミだったりして、よく考えると、あんまり豆まきらしくなかったかもしれませ。でもだからこそ僕等にとって「豆まき」はとてもとても魅力的な行事で、ヘタするとクリスマスよりも待ち遠しかったりしたものです。

座敷での豆まきが終わったら、電気をつけます。部屋の隅っこに転がっている小さな大豆なんかもきちんと拾って、みんなでこたつに入って、歳の数だけ豆を食べるんです。父も母もたべます。
僕等は6つとか7つとかしかたべられないのに、父や母はたくさんたべれてうらやましかった(笑)。

おにたのぼうし節分の夜の、小さなお話があります。
おにたのぼうし」というんですが、おにたというとてもいい鬼のせつないお話です。小さい頃は、勧善懲悪、というか、いいことをした人は最期にいい思いをする、という予定調和な話を多く読んだりするわけですが、この話は、ある意味とても悲しい終わり方をします。おにたというとてもきれいな心を持つ鬼が、鬼というだけで、理不尽に傷つけられ、報われることはありません。
でもおにたは最後まで、最後の最後まで自分に出来るすべてを与え続ける。
子供心に「せつない」という気持ちをはじめて感じたのはこの絵本でした。

小学生の時、お気に入りの本をクラスに持ち寄って、学級文庫にしようというのがあって、僕は迷わずこの「おにたのぼうし」を持っていきました。だれの本かわかるように、名前を書いておきなさいと先生に言われて、僕も本の裏にボールペンでぎゅうと名前を書きました。

だからお店の本棚にある「おにたのぼうし」には、へたくそな字で名前が書いてあるのです。

 
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